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【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.70
2021/1/27
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★バイデン政権で、米ロ関係はどうなる?
全世界の裏RPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
バイデンとプーチンが、電話会談しました。
<新START延長で原則合意 米ロ首脳が電話会談
2021年01月27日07時15分
【ワシントン、モスクワ時事】米ホワイトハウスに
よると、バイデン大統領とロシアのプーチン大統領が
26日、電話会談し、2月5日に期限が切れる米ロの
新戦略兵器削減条約(新START)の5年延長で原
則合意した。
米ロ間に残る唯一の核軍縮の枠組みは期限切れ間際で
維持される見通しとなった。>
新戦略兵器削減条約(新START)は、その名の通り、
米ロの核軍縮条約です。
2011年に締結されました。
オバマ政権、バイデンが副大統領の時代です。
これが延長される方向。
米ロにとっても、世界にとってもいいことです。
ところで、バイデン政権で、米ロ関係はどうなるので
しょうか?
一般的には、「バイデンは反ロシアだから、悪くなる」
といわれています。
ロシアのメディアを見ても、そんな論調です。
ですが、私は、「バイデン政権下で、米ロ関係が改善
されるのではないか」と考えています。
なぜ?
▼世界の三国志
リアリズムの神ミアシャイマーは、
「世界には大国が三つある」といいます。
アメリカ、中国、ロシアです。
アメリカは、経済力、軍事費共に世界一。
中国は、経済力、軍事費で世界2位。
ロシアは、経済力(GDP)世界11位。
人口1億4600万人で、人口5000万人の韓国並みの
経済力しかない。
だから、ロシアは経済大国ではありません。
ですが、この国の核戦力は、アメリカ並み。
世界一広大な領土があり、原油生産量は世界3位、
天然ガス生産量は世界2位。
というわけで、落ちぶれたとはいえ、
ロシアは、大国なのです。
三国志では、魏呉蜀が、
同盟したり、分裂したりしていたでしょう。
今の三国志も同じです。
第2次大戦時、
アメリカ、ロシア(当時ソ連)、中国(当時中華民国)
は一体化して、ナチスドイツ、日本を打倒しました。
次に、アメリカとロシア(当時ソ連)の冷戦がはじまった。
アメリカは、かつての敵日本とドイツ(西ドイツ)を味方
にします。
それでも、ソ連が強くなってきたので、1970年代初め、
中国と事実上の同盟関係を結びました。
今、アメリカと中国の覇権戦争が起こっている。
常識的に考えると、アメリカはロシアと組んだ方がいい。
これが、普通の戦略観です。
それで、ミアシャイマーも、世界一の戦略家ルトワックも
「ロシアと組もう」といいつづけている。
バイデンが物事を戦略的に考えれる人であれば、
「中国に勝つためには、ロシアと組んだ方がいいよな」
と考えるでしょう。
▼バイデンとロシアの関係は、「常に最悪」ではなかった
「バイデン政権は、オバマ政権の繰り返しになる」
といわれています。
そうかもしれません。
政権内の顔ぶれをみても、オバマ時代にいた人が多い。
そうなると、「オバマ時代、米ロ関係はどうだったのか」
が重要ですね。
そして、一般的に「オバマ時代米ロ関係は最悪だった」と
いわれている。
これ、厳密にいうと、「そうともいえない」のです。
詳しく見てみましょう。
米ロ関係がひどく悪化したのは、ブッシュ(子)の時代です。
プーチンは、2003年にはじまったアメリカのイラク戦争に
反対した。
その後、ロシアが「勢力圏」と考える「旧ソ連諸国」で
次々と革命が起こりました。
03年ジョージア(グルジア)、04年ウクライナ、05年キルギス。
プーチンは、「これらの革命はアメリカの支援によって
起こった」と確信していました。
米ロ関係は悪化しつづけ、08年8月には
ロシアとジョージア(グルジア)の戦争に発展していきます。
アメリカは、ジョージアを支援しましたが、
この戦争は短期間で終わりました。
理由は、08年9月にリーマンショックから世界的大不況に
突入したからです。
オバマが大統領になった09年、
米ロ関係は劇的に改善されました。
「米ロ再起動」と呼ばれる時代がやってきた。
ちなみにこの時代、ロシアの大統領は、メドベージェフでした。
そう、オバマ大統領、バイデン副大統領の一期目は、
米ロ再起動時代。
米ロ関係は、よかったのです。
しかし、2012年にプーチンが大統領に返り咲いた。
両国関係は、再び悪化しはじめました。
米ロは、まずシリア問題で対立した。
アメリカは、反アサド派を支援し、ロシアはアサドを支援した。
そして、2014年3月のクリミア併合。
これでアメリカは、欧州、日本を巻き込み、対ロ制裁を主導しました。
米ロ関係は最悪になります。
ところが、2015年3月、AIIB事件が起こり、
アメリカは中国が最大の敵であることを悟った。
以後、ロシアと和解し、諸問題を解決するために動きます。
米ロは共同で、ウクライナ内戦、シリア内戦、
イラン核問題の解決に取り組みます。
そして、ウクライナ内戦、シリア内戦は沈静化した。
イランについては、15年7月「核合意」が成立したのです。
アメリカは、ロシアと組んで三つの問題を解決し、
戦力を対中国に集中させたかった。
こういう流れを見ると、「バイデンは反ロシアだから、
米ロ関係は悪化する」
というのは、「単純化しすぎ」でしょう。
実際は、2009~2011年、2015~2016年、
米ロ関係は悪くなかった。
確かにバイデンは、反ロシアなのでしょう。
しかし、副大統領だった彼は、必要な時にロシアと
仲良くしていたのです。
それで、今回も、戦略的に必要となれば、
ロシアに歩みよるでしょう。
そして、「中国に勝ちたければ、中ロを分断させた方が
いい」というのは、誰でも思いつくことです。
同じ理由で、私は、日米関係についても心配していません。
バイデンは、「親中反日」といわれています。
しかし、彼が米中覇権戦争に勝ちたければ、
世界3位の経済大国日本を味方につける必要がある。
すでに、バイデン自身も、新国防長官も、「尖閣は日米安
保の適用範囲」と発言し、日本政府を安心させました。
私はバイデンが好きではありませんが、少なくとも彼は、
「戦略的に動ける人」
であると、オバマ政権時代の言動から感じています。
それで、私はアメリカについては心配していません。
心配なのは、いまだに「習近平主席の国賓訪日を!」など
といっている、国内親中派です。
●PS
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