◆ 裏RPE

本文へジャンプ  

 

【裏】RPEJournal=======================================



     【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.378


                       2025/2/21


=======================================================

★トランプの意外な情報源



全世界の裏RPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。



昨日は、アメリカと欧州社会の分断が、
「クレムリンによって引き起こされた」という話をしました。

具体的には、プリゴジンが立ち上げたIRAと軍諜報GRUが工作を行ってきた。

クレムリンは2016年、トランプが大統領選挙で勝利するのを全力で支援しました。

その後、ムラー特別検察官は、
「トランプ陣営とロシアの『共謀はなかった』」と結論づけました。

しかし、「ロシアがトランプが勝つ工作をした」のは明らかで、
ただ「共謀はなかった」という話です。


さて、2期目になってもトランプの「プーチン愛」はゆるぎないです。

彼はウクライナ戦争について、


・現在の前線での停戦

・ウクライナをNATOに入れない


で話を進めようとしています。

「現在の前線での停戦」というのは、要するにロシアが2022年9月、
一方的に併合したルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、へルソン州を、
「事実上ロシアの支配下のままにする」という意味。

ウクライナはロシアの領有権を認めないが、ロシアが実効支配しつづける。

つまり、「北方領土のような状態にする」ことを意味しています。


そして、「NATOに加盟させない」というのも、もちろんプーチンの要求です。

なんといってもプーチンは、
「ウクライナのNATO加盟とNATO拡大を阻止するために」
ウクライナ侵略を開始したのですから。

要するに、トランプの「停戦案」は、プーチンの「停戦案」と同じなのです。

別の言い方をすると、トランプは、事実として「プーチンの指示どおり動いている」。


そして、最近の発言から、「トランプの情報源は、クレムリン情報ピラミッド」
であることがわかりました。

その発言とは何でしょうか?

『NHK NEWS WEB』2月20日。



〈トランプ大統領は19日、南部フロリダ州で開かれたイベントで演説し、
ウクライナのゼレンスキー大統領について「選挙の実施を拒否している。
実際のウクライナでの世論調査では支持率は低い。

すべての都市が破壊されているのに、どうして高い支持率を得られるだろうか」
と述べました。

その上で「選挙なき独裁者であるゼレンスキーはもっと迅速に動くべきだ。
そうしなければ、国が残らないだろう。戦争は悪い方向に向かっている」と
強く批判しました。

トランプ大統領はこれに先立ちSNSでも、
ゼレンスキー大統領について「選挙なき独裁者」と投稿していました。〉
ーー


どういう話でしょうか?

ゼレンスキーがウクライナの大統領に就任したのは、2019年5月です。

ウクライナ大統領の任期は5年。

つまり、2024年5月で、ゼレンスキーの任期は終わっている。

しかし、ウクライナでは大統領選挙が実施されていません。

それは、ロシアがウクライナを侵略し、戦争がつづいているからです。

戦時下でのウクライナでは戒厳令がだされていて、
戒厳令下で選挙をしないのは、まったく合法です。

そして、今のウクライナでは、大統領選挙実施が困難な客観的理由もあります。

たとえば、ロシアに国土の5分の1を占領されていること。

占領地の国民は、大統領選挙に参加できないでしょう。

ロシアによるウクライナ侵攻開始後、約700万人が外国に脱出していて、
彼らが選挙に参加するのも困難。。

さらに、戦っている数十万人の兵士も選挙に行くのは難しい。

要するに、ロシアがウクライナに侵攻したせいで、
ウクライナでは大統領選挙実施が難しい。

このような事情、ほぼ全員理解しています。

たとえば。

『BBC NEWS JAPAN』2月20日。



〈英首相官邸の報道官は、スターマー首相が「ゼレンスキー大統領を、
民主的に選ばれたウクライナ指導者として支持すると表明した」と説明。

「第2次世界大戦下のイギリスのように、戦時中に選挙が実施されないのは
全く合理的だ」と、付け加えた。〉
ーーー



そう、イギリスでも、戦時中は選挙が行われなかったのです。

では、トランプは、なぜゼレンスキーについて、
「選挙なき独裁者」と「変なこと」をいうのでしょうか?

実は、トランプ以外に、同じ主張をしている首脳が【 ひとりだけ 】います。


そう、プーチンです。

『読売新聞オンライン』1月29日。
『プーチン氏、ゼレンスキー大統領は「非合法な指導者」…
停戦合意に「署名する権利はない」』



〈ロシア通信などによると、ロシアのプーチン大統領は28日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領について「非合法」な指導者で、停戦交渉が実現して合意に至った場合も「署名する権利はない」と一方的に訴えた。昨年5月に大統領の任期満了を迎えたゼレンスキー氏に正統性はないと改めて主張した。〉
ーー



プーチンが1月28日に、「ゼレンスキーは非合法の指導者」といった。

トランプが2月19日、「ゼレンスキーは選挙なき独裁者」と呼んだ。


このことは、トランプがプーチンの主張をそのまま繰り返していることを示しています。

さらにトランプは、ゼレンスキーの支持率は、「4%だ」ともいいました。

考えてみてください。

支持率4%の大統領が、政権を維持できるでしょうか?

それほど不人気であれば、とっくにクーデターが起こっているはずです。

ちなみに、BBCの世論調査では、
ゼレンスキーの支持率は57%だそうです。(『BBC NEWS JAPAN』2月20日)

トランプの「奇妙な発言」についてゼレンスキーは、言いました。



〈ゼレンスキー氏は翌19日、ウクライナの首都キーウで記者団の取材に応じ、


「我々は多くの偽情報を目にしている。これはロシアから発信されているものだ。
指導者としてのドナルド・トランプ大統領にはしかるべき敬意を表するが(中略)
彼はこの偽の情報空間に生きている」


と述べた。〉(同前)
ーー 


この「偽の情報空間」のことを、【 クレムリン情報ピラミッド 】というのです。

クレムリン情報ピラミッドは、いつも悪いわけではありません。

そこでは、欧米支配層のダークサイドについて知ることができます。

たとえば私は、2014年出版の『クレムリン・メソッド』の中で、
バイデン副大統領(当時)の息子ハンターが、ウクライナのエネルギー会社
ブリスマの取締役に就任したことを書いています。

これは、クレムリン情報ピラミッドからの情報でした。

しかし、クレムリン情報ピラミッドは、完全なプロパガンダ組織、
情報戦の武器なので、注意が必要です。


なぜ、トランプは、クレムリン情報ピラミッドのフェイク情報を
信じてしまったのでしょうか?

彼は、フォックスニュース以外のアメリカメディアのほとんどは左翼で、
フェイクニュースばかり流していると信じています。

そのせいで「RTなどクレムリン情報ピラミッドには真実がある」と
信じてしまったのかもしれません。

背景についてはよくわかりませんが、とにかくトランプは、
事実「クレムリンの意向どおりに動いている」ことを私たちは
認識しておく必要があるでしょう。


◆重要PS

今回のメルマガはいかがだったでしょうか?

一定の人たちは、テレビ、新聞など既存マスコミを「マスゴミ」と呼び軽蔑しています。

彼らは、「マスゴミ」を信じている人たちを「情弱め!」といってバカにします。

彼らは、「僕らは世界の 【 裏 】を知っている情報強者だ!」と、
自分を誇りに思っているのです。

ところが、実をいうと彼らは、クレムリン情報ピラミッドに「洗脳」されているだけ。

これが、【 裏の裏 】です。

皆さん、【 裏の裏 】をもっと知りたくないですか?

知りたい方は、是非『パワーゲーム』に参加してみてください。

詳細はこちら↓
https://in.powergame.jp/kipg_year_rpe


PS2

北野の新刊、快調に売れ続けています。


◆『プーチンはすでに、戦略的には負けている 
~  戦術的勝利が戦略的敗北に変わるとき 』

詳細は↓
https://amzn.to/407Quka

すでに読まれた方は、アマゾンにレビューを投稿していただけると、とても助かります。

なにとぞよろしくお願いいたします。


▼▼「おたよりコーナー」へ
=======================================================

★山路さまからのメール


北野先生

いつもメルマガを大変面白く拝読しています。

今日の、「DS陰謀論はクレムリン発」というのには驚かされました。

私は、昨年の大統領選挙前の日本の報道があまりにもハリス側に偏っており、トランプ氏をまるで悪の帝王のように扱う報道に気持ち悪さを感じていました。

これは左翼による、「真っ当な政治を排除する偏向報道」なのだと思っていました。

そして、実際トランプ氏が大統領になったとき、見る人はちゃんと見ているのだと、彼ぐらいの有言実行をしなければ世界は変わらないのだと喝采を送ったほどです。

でも、実際に彼のやり方を見ていると、こちらもかなりの偏向だと思い始めました。

なのに、トランプ支持者は「民主党バイデンこそが悪で、DSの息のかかったものである」という情報発信をしています。

多様性を認めず、アメリカ古来の価値観のみを美しいとする考え方、これも偏向の一つだと思うのですが、「今までの価値観(LGBTQ推進、ウクライナ支援、ワクチン推進など)こそが間違っていたのだ」と声高に決めつけています。

こういう方たちに「ハイブリッド戦争」のような本を紹介しても一笑に付されるだけなのでしょうね。

この分断はどうしたら解消できるのでしょうか。

この先がとても不安です。


★北野から


不幸中の幸いといいますか、日本社会の分断はそれほど進んでいないようです。

クレムリンに操られているような政党もありますが、あまり人気がないのが救いです。



★北野への応援メールは

tjkitanojp〇yahoo.co.jp

(〇を@にかえてください。)

まで。



=======================================================


○メールマガジン「【裏】ロシア政治経済ジャーナル」


発行者 北野 幸伯


Copyright (C)RPE JournalAll Rights Reserved. 358


======================================================

HOMEプロフィール北野の声読者の声北野の夢北野が登場したメディア北野が登場した動画裏RPEバックナンバー