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【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.377
2025/2/20
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★ディープステイト陰謀論の源流
全世界の裏RPE読者の皆様、こんにちは!
北野です。
今日は、まさに【裏メルマガ】的話です。
というのも、表メルマガつまり、「ロシア政治経済ジャーナル」(RPE)で
このことを書くと、批判メールが殺到して大変なことになるからです。
なんでしょうか?
アメリカでは昨年、「内戦が起こるかもしれない」といわれていました。
『CNN.co.jp』2024年3月25日付
『米国は新たな内戦の瀬戸際にあるのか』を読んでみましょう。
〈トランプ前大統領は、恐らくこれまでで最も声高に叫ぶ予言者だろう。
もし自分に対する刑事告訴が24年大統領選の敗北につながることがあれば、
「国に混乱が起きる」と警告している。〉
〈22年の著書「アメリカは内戦に向かうのか」の中で、名高い政治学者の
バーバラ・F・ウォルター氏は米国の状況について、誰が想定するよりも
内戦に近づいていると主張する。〉
〈国家安全保障会議(NSC)の元メンバー、スティーブン・サイモン氏と
ジョナサン・スティーブンソン氏は、北アイルランドと中東における宗派間の
争いについて深い知識を有する。
彼らも同様に、米国が簡単に内戦に突入する恐れのある状況を説明している。〉
ーーー
そして、「どのように内戦がはじまるのか」も、だいたいイメージできていました。
・2024年11月の大統領選でハリスが勝利する。
・トランプは2000年の大統領選時同様、敗北を認めず、
「選挙では大規模な不正が行われた。本当に勝ったのは私だ!」と宣言する。
・2000年の大統領選後同様、大規模なデモが起こる。
・2001年1月同様、大規模な暴動に発展する
(この時はアメリカ議会選挙事件が発生した)。
2000年の大統領選時、「トランプが負けを認めない」
「大規模デモ」「大規模暴動」は起きました。
だから2024年にトランプが負けたら、そこまでは容易にイメージできます。
問題は、「大規模暴動が内戦に発展するのか?」という話だったのです。
しかし、内戦は起きませんでした。
トランプが勝利し、ハリスがあっさり敗北を認めたからです。
問題は、「なぜアメリカは、内戦前夜までいったのか?」ということです。
「社会が真っ二つに分断されているからだ」というのが答えです。
・移民受け入れに賛成か、反対か?
・銃規制に賛成か、反対か?
・中絶に賛成か、反対か?
・LGBTQに賛成か、反対か?
これらの問題で、アメリカは、まさに真っ二つになっています。
そして、こういう現象は、欧州でも起こっています。
欧州諸国でも、ほとんどの国で分断が進んでいる。
そして、ほとんどの国で、移民排斥を求める極右が台頭しているのです。
アメリカが内戦前夜になったのは、社会が真っ二つに分断されているからである。
問題はここからです。
【 なぜアメリカや欧州は、社会が真っ二つに分断されたのでしょうか? 】
これ、皆さんわかりますか?
トランプさんと欧州で台頭している極右の後二つの共通点をあげてみましょう。
そう、彼らは
・ウクライナ支援に反対
・親プーチン
なのです。
これは、偶然でしょうか?
偶然ではありません。
ここからは、
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を参考にお話しします。
2013年秋、ウクライナの親ロシア大統領ヤヌコーヴィッチは、
EUとの関係強化を目的とする協定の調印問題を抱えていました。
2013年11月21日、ヤヌコーヴィッチは、EUとの交渉中止を発表。
その結果、EUへの接近を望む市民のデモが起こってきました。
ヤヌコーヴィッチは武力でデモの鎮圧を図ります。
しかし、デモは収まりませんでした。
2014年1月27日、アメリカの国務次官補ヌーランドは、
駐ウクライナ米大使パイアットに電話をかけました。
彼女は言います。
「この問題を解決するのに、(アメリカが)手を貸して、
国連にこれを解決するのを手伝わせたら素晴らしいでしょうね。
そうしたら、ねえ、EUなんかくそくらえよ!」
パイアット大使は言いました。
「国連に協力させるために何かしなければならないと思う。
あなたもそう思うだろうが、あそこが高度を上げ始めると、
ロシアの方はそれを吹き飛ばすように裏で動くだろうから」
ロシアの諜報機関は、この会話を傍受していました。
2024年2月4日、この会話の録音がYoutubeに投稿されました。
〈電話の暴露の効果は絶大だった。
ウクライナ問題をめぐり、EUをののしる発言をした
米国とヨーロッパの間に楔を打ち込むことができた。
そればかりではない。
ヌーランドの夫はネオコン(新保守主義)の論客ロバート・ケーガンだった。
ネオコンはイラク戦争とイラクの体制転換を唱道したこともあり、米国やEUが、
ウクライナの体制転換を企図しており、こうしたネオコンやグローバリストによる
主権国家への攻撃を阻止するためにロシアは行動を起こす必要があるという
ロシア側のナラティブ(=ストーリー)を創り上げるのには非常に好都合だった。〉(p70)
――
プーチンは、アメリカ国内での情報戦を開始していきます。
▼プーチン、対米情報戦の目的
プーチンには二つの目的がありました。
一つは、アメリカ社会を分断することです。
〈いよいよロシアは、米国を情報戦の標的として直接定めた。
黒人初のバラク・オバマ政権下の米国は、人種、銃規制、性的少数者、移民など、
国民のアイデンティティに関わる多くの問題を抱えており、ロシアは、米国社会に
横たわるこうした問題を情報の力で先鋭化させ、米国社会を分断させる情報戦の
準備に着手した。〉(p71、72)
――
既述のようにアメリカ社会は現在、完全に分断されています。
銃規制に賛成か、反対か?
LGBTに賛成か、反対か?
中絶に賛成か、反対か?
移民に賛成か、反対か?
これらの問題は、元から存在していたでしょう。
しかし、プーチンが情報戦によって、これらの問題を「過激化」させていったのです。
▼プーチンによるトランプ支援
プーチンの情報戦、もう一つの目的は、トランプを当選させることです。
〈それから間もなく、二〇一五年六月一六日、トランプが大統領選挙への
立候補を表明したことはロシアの情報戦にとって追い風となった。
SNSを駆使し、歯に衣着せぬ物言いで支持を拡大させるトランプの登場を受け、
IRA(註:「インターネット、リサーチ、エージェンシー」。プリゴジンが設立し、
情報工作を担った。)は、米国社会における「右翼」、「左翼」、「黒人」の三つの
「戦線」を標的に、SNS上で集中的に情報戦を開始した。〉(p72)
――
具体的に、「右翼」「左翼」「黒人」戦線では何が行われたのでしょうか?
・右翼戦線
=オバマが推進する移民、イスラム教徒、性的少数者に寛容な政策を
痛烈に批判するコンテンツをSNS上で展開する。
結果、右翼がトランプ支持にまわるよう仕向けた。
・黒人戦線
黒人有権者に白人への憎悪を煽り、恐怖心を植えつけ、
選挙をボイコットするよう呼びかけた。
クレムリンは、テキサス在住の「パメラ・ムーア」「ジョン・デーヴィス」など、
存在しない人物のアカウントをSNSにつくり、情報を発信することで、
アメリカの世論に影響を与えていきました。
・左翼戦線
プーチンが長年嫌っていたヒラリーを落選させること。
左翼戦線でIRAは、ヒラリーを攻撃した。
そして、泡沫候補だった緑の党のジル・スタインへの投票を呼び掛けた。
ジル・スタインは、
〈 ロシアの「影響力の代理人」だった。
そもそもスタインが大統領選挙への立候補を表明したのは、
ロシア国営メディアRT(ロシア・トゥディ)の米国向けチャンネルだった。〉(p75)
――
ここまではプリゴジンのIRAの情報戦でした。
一方、ロシア軍の諜報機関GRU(=ロシア連邦軍参謀本部情報総局)は、
ハッキングによってヒラリー・クリントンの選挙対策本部長ポデスタから5万通の
メールを盗んでいました。
そして、ヒラリーにとって都合の悪い情報をジュリアン・アサンジの
「ウィキリークス」にどんどん流していきました。
追い詰められるヒラリーをみてトランプは、
「ウィキリークス!私はウィキリークスが大好きだ」と発言し、喜んでいました。
ロシアの情報戦の結果、当初泡沫候補と思われていたトランプが勝利しました。
〈選挙当日、これまで一連の情報戦に加担したロシア人たち
こんな言葉を交わしていたという。
「俺たちが、米国を偉大にしたんだ」〉(p77)
――
ロシア政府の高官たちが、トランプの勝利したのを見て、
大喜びしていたのは本当です。
彼らは口をそろえて、「これは我々の勝利だ!」と叫んでいました。
プーチンが勝利したときよりも喜んでいるのをみて、
私は、「ロシアはアメリカ大統領選挙に介入したのだな」と確信しました。
▼ディープ・ステイト陰謀論の出所
2016年のロシアの情報戦は、大成功でした。
目論見通りトランプが勝利し、分断が固定化されてしまったのです。
〈二〇一六年大統領選挙におけるロシアの情報戦の影響はその後も尾を引いた。
大統領選挙を経て、米国内では政治的主張をめぐる
さまざまな分断状況が固定化し、先鋭化した。
そればかりではない。
米国内ではディープ・ステイト(闇の政府)論に代表される陰謀論が
深刻なまでに蔓延した。〉(p78)
〈ディープ・ステイトやグローバリストと戦う「救世主」トランプの下、
「米国を再び偉大にする」ことを目論む右派の陰謀論者バノンや
ルドルフ・ジュリアーニ、シドニー・パウエルらが大統領上級顧問や
弁護士の立場でトランプや彼を支持する陰謀論者たちと個人的関係を
持ったことは状況をさらに悪化させた〉
――
2020年の大統領選挙で、プーチンの友トランプは敗れました。
しかし、2021年1月6日、事件は起こりました。
〈トランプの演説を聞き興奮した群衆は議事堂に向かった。
ワシントンDCに雲のかかり始めた寒空の午後のことであった。
やがて約八〇〇人の暴徒が議事堂への襲撃を開始した。
この時の衝撃は、いまさら繰り返すまでもない。
暴徒化した米国民が、米国の民主主義の象徴たる議事堂を襲撃する映像は、
世界中のメディアに取り上げられ、米国の国際的信用は地に落ちた。〉(p80)
――
さて、この議会議事堂襲撃事件について、ロシアは、どう反応したのでしょうか?
〈この日、ロシア政府とつながりがあると思われる、
あるアカウントにこのようなツイートがあった。
「帝国が崩壊していくさまは、なんとも美しい」
ロシアは、サイバー諜報で窃取した情報の暴露などの工作をせずとも、
陰謀論を含む偽情報の拡散を主とする影響工作を継続的にしかけるだけで、
回復不能なレベルにまで米国社会の分断に拍車をかけ、首都を米国民の
手によって攻撃することが可能であることを実証したのであった。〉(p81)
――
▼まとめと教訓
ここまでの流れをまとめてみましょう。
・ロシアのIRAは2016年、右翼戦線、左翼戦線、黒人戦線工作によって、
また軍諜報はハッキングによって得た情報の暴露によって、プーチンが嫌う
ヒラリー・クリントンを落選させ、親プーチンのトランプを勝利させた。
・ロシアの情報戦によって、アメリカ社会は完全分断された。
・トランプは2020年の大統領選で敗北したが、それを認めなかった。
・2021年1月6日、トランプ支持者による、「アメリカ議会議事堂占拠事件」が起こった。
・またロシアの情報戦により、
アメリカで「ディープ・ステイト陰謀論」が爆発的に広がった。
・ロシアによって分断されたアメリカは今、「内戦前夜」になった。
というわけで、「ロシアの情報戦で、アメリカは内戦前夜に追い込まれた」と
志田先生は主張しているのです。
私たち日本人が得るべき教訓はなんでしょうか?
「ディープ・ステイト陰謀論」の出所はクレムリンだと知り、
踊らされるのはやめましょう。
この陰謀論を子供のように信じていれば、日本社会も真っ二つに分断され、
そのうち内戦の危機になってしまいます。
ちなみに志田先生の著書『ハイブリッド戦争』には、
日本で活動している「クレムリンのエージェント」の名前が実名で複数登場しています。
実名で挙げられた人が本当にクレムリンのエージェントなのか、私にはわかりません。
しかし、興味がある方は、確認してみてください。
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ご一読ください。
◆重要PS
今回のメルマガはいかがだったでしょうか?
一定の人たちは、テレビ、新聞など既存マスコミを「マスゴミ」と呼び軽蔑しています。
彼らは、「マスゴミ」を信じている人たちを「情弱め!」といってバカにします。
彼らは、「僕らは世界の 【 裏 】を知っている情報強者だ!」と、自分を誇りに思っているのです。
ところが、実をいうと彼らは、クレムリン情報ピラミッドに「洗脳」されているだけ。
これが、【 裏の裏 】です。
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★岡田さまからのメール
北野幸伯さま
ミュンヘンの安保会議にしろ、トランプのウクライナへの要求にしろ、彼のロシアへの融和政策はネヴィル・チェンバレンの1938年の愚策の再現、言わばミュンヘン2.0です。
実にいやなことですが、アメリカの没落は、これで確定でしょう。
アメリカ国民が、何時、自分達の投票の過ちに気づくか、民主党が民衆から見放された自党をしっかり立て直せるか、共和党の本流がトランプ派を追放できるか?
多分、トランプの賞味期限は短く、そのやりたい放題は、そう長くは続けられないとは思いますが、誰にとっても賢い選択が迫られます。
まずは、アメリカの命運より、日本の生存、自立が大切でしょう。
民主主義は欠陥もありますが、最終的には民衆の知恵が働くシステムです。その勝利を信じましょう。
北野さんのご健闘、ご健筆を心より祈ります。
★北野から
「アメリカの命運より、日本の生存、自立が大切」
まさに、その通りだと思います。
★北野への応援メールは
tjkitanojp〇yahoo.co.jp
(〇を@にかえてください。)
まで。
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