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     【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.311


                       2024/11/5


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★プーチン政権の本質



全世界の裏RPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。


「プーチン最大の敵」とよばれたアレクセイ・ナワリヌイ最後の著書



◆『PATRIOT ~ プーチンを追い詰めた男の最後の手記』

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を読んでいます。

1章では、「暗殺未遂事件」の詳細。

2章では、ナワリヌイが生まれてから2000年に結婚するまでのことが記されています。

ナワリヌイが生まれたのは1976年。

ソ連が崩壊した1991年時は、15歳。

ソ連時代をよく覚えている年齢といえるでしょう。

日本人にとってソ連は、「わけのわからない国」です。

ナワリヌイの本を読むと、少なくとも末期のソ連についてはとてもよくわかります。


本の中で面白い記述を見つけました。

1986年4月、ナワリヌイが9歳の時にチェルノブイリ原発事故が起こりました。

原発事故が起こった後のある日、ナワリヌイは両親に連れられて、
ソ連初の原子力発電所が建設された町オブニンスクに行きました。

すると道路に、


〈見慣れない白い服にすっぽり包まれた兵士たちが路上に立っていた。

ガスマスクも被っているから、なんだか奇妙な動物のようにも見える。〉(p34)
ーー



防護服を着た兵士たちは、何をしていたのでしょうか?



〈兵士たちが手にした金属棒は、タイヤの放射能レベルの測定器だった。〉(p35)

ーー


なるほど~。

オブニンスクとチェルノブイリはずいぶん離れていますが、
なぜここで放射能の測定をしていたのでしょうか?



〈チェルノブイリ原発事故の大惨事が過失によるものだと政府は認めておらず、
これ見よがしな検閲は、事故を仕組んだ妨害工作員を見つけ出すためというのが、
公式の説明だった。

原子力発電所があるすべての都市で、警備が強化されていたのである。〉(p35)
ーー


「妨害工作員」がチェルノブイリ原発事故を起こしたのだそうです。



〈スパイ(当然、米国のスパイだ)が原発を次々に爆発させるべく国内を移動しているとすれば、タイヤに付着した放射性物質の痕跡で犯人と特定できるというわけだ。〉(p35)
ーー


「米国のスパイ」がチェルノブイリ事故を起こし、さらにソ連国内にある原発を次々に
爆発させるべく移動している可能性があるそうです。

ところが、ナワリヌイの母親は、検閲の本当の理由を見抜いていました。



〈ニュースでは偽情報がばらまかれているにもかかわらず、多くの研究者は家族全員を
車に乗せ、オブニンスクに逃げ戻っていたのだ。
検閲の本当の目的は、原発から逃げ出した研究者らを見つけ出すことだった。〉(p35)
ーー


ソ連政府は、チェルノブイリ原発事故について、
「アメリカのスパイが引き起こした」とウソをついていた。

ナワリヌイは、政府がウソをつくことは一般的だとしています。



〈最初の公式の反応は決まって嘘なのだ。

大して衝撃的でもない規模の危機であっても、
まずは嘘という対応を何度となく目にしてきた。

当局者が嘘をつく実際の利益などなく、
単に「まずい状況になったらごまかせ」という規則なのだ。

損害を過小評価し、何でも否定し、はったりをきかせる。

なぜなら当局が想定している国民は、“馬鹿な国民”であって、
真実を受け止める覚悟などありはしないという前提なのだ。〉(p39)
ーー



このあたりの記述を読んで、私は「今と同じだな」と思いました。

何が同じなのでしょうか?

二つ。


一つ目は、政府自身が「ウソのアメリカ陰謀論」を拡散していること。

二つ目は、政府によるウソが「日常化」していること。



私が28年間モスクワに住んでわかったこと。

それは、ロシア国民のほとんどが、「アメリカ陰謀論者である」ということです。

冷戦時代、アメリカ(いわゆる米帝)は、ソ連最大の敵でした。

それで、ソ連政府は、「アメリカ(とイギリス)が諸悪の根源だ!」
とプロパガンダしつづけていたのです。

だから年配の人ほど、「アメリカ陰謀論者」の割合が高くなっていきます。

ナワリヌイの記述を見ると、ソ連政府は、なんとチェルノブイリ原発事故も、
「アメリカのスパイのせいにしていた」ことがわかります。

(ちなみにアメリカ陰謀論者によると、プリゴジンを殺したのも、
ナワリヌイを殺したのも、アメリカということになっています。)


そして、ソ連政府が日常的にウソをついていたことが記されています。


考えてみると、プーチン政権も同じですね。

ウクライナ侵略の理由はいろいろありますが、プーチンは「後づけ」で、


「ロシアが先制攻撃しなければ、ウクライナがロシアを攻めただろう」


と大ウソをついています。

ウクライナが、核超大国ロシアに先制攻撃をする???

誰でもわかるウソですが、ロシア政府は「馬鹿な国民」と考えているので、
「どんなウソでも信じさせることができる」と確信しているのでしょうか。


忘れがちですが、プーチンは、KGBの出身です。

そして、KGBの後継機関であるFSBの長官まで昇りつめた男。

「泣く子も黙るKGB」は、「馬鹿なソ連国民」を、ウソで支配していました。

骨の髄までKGBのプーチンは、今も自分が慣れ親しんだ方法で、
「ウソをベースに」ロシア国民を支配しているのです。


私は、全然人種主義差別主義者ではありません。

しかし、事実として世界には、「ウソで国を統治している大国」が二つあります。


一つは、中国です。

なぜ?

中国は、共産主義で、無神論国家ですが、支配者層は「別の宗教」を信じています。

「孫子教」です。

日本のビジネスマンにも愛される孫子ですが、
最重要ポイントは「戦わずに勝つ」でしょう。

次の重要ポイントは、「兵は詭道なり」でしょう。

要するに、「戦争で勝つためには騙せ!」と主張している。

そして、共産中国は、悪の資本主義と戦いつづけているので、
彼らの意識では、「今は戦時中」なのです。

だから、中国のトップは、「戦争中だからだますのはいいことだ」と考えている。


「ウソで国を統治している大国」二つ目は、もちろんロシアです。

こちらは、「ウソをつくのが仕事」のKGBがいまだに国を支配しているので、
相変わらずウソばかりついているのです。


強調しておきますが、私は中国国民、
ロシア国民の話をしているわけではありません。

あくまでトップの話です。


ナワリヌイの本を読むと、「プーチンは、ソ連時代と同じやり方で
国を統治しているのだな」ということがよくわかります。


彼個人の生涯はもちろんですが、
ソ連末期から現代にいたるまでのロシアの歩みが
とてもよくわかる本になっています。

是非ご一読ください。



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発行者 北野 幸伯


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