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     【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.2


                      2020/2/15


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★アメリカは本当に中国に勝てるのでしょうか?



全世界の【裏】RPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。


読者の鳥人さまから、以下のようなメールをいただきまし
た。


<北野先生、いつも貴重な情報をありがとうございます。

鳥人です。

今回のニュース、とても衝撃を受けたのですが、それで
も北野先生は依然として「この戦争に勝利するのはやは
りアメリカだ」「日本はアメリカに味方すべきだ」とお
考えでしょうか?

あるいは、こうなると「どちらに転ぶか分からない」と
いう状況でしょうか?

以前、国家のライフサイクル論から中国の衰退もあって
、米中覇権戦争はアメリカが勝利すると仰っていました
が、今回のようなアメリカ同盟国の中核に至るまでの中
国の影響力や、今回のWHO事務局長の習近平マンセイに
見られるような各国際機関(国連含む)の中国の傀儡化を
見ますと、なんかもう中国がこの戦いに勝ってしまうの
ではないか?と危惧しています。

このように感じている読者も多いのではないかと思いま
すので、何かの折に記事のテーマに入れていただけると
有り難く。

これからも北野先生のご活躍をお祈りしております。>



鳥人さんは、「米中覇権戦争で中国が勝つのではないか
?」と恐れています。

どうなのでしょうか?

今回は、この重要問題について考えてみましょう。



▼みんな悩んでいる



「米中覇権戦争でどっちが勝つのかな?」


これは、全世界の人が考えている疑問です。

そして、かなりの人たちが、「ひょっとしたら中国が勝つ
のではないか?」と考えている可能性がある。

なぜでしょうか?

現象がそう考えさせるのです。

いくつか例を挙げておきましょう。


・AIIB事件

2015年3月に起こった、裏歴史的大事件。

イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、ルクセ
ンブルグ、イスラエル、オーストラリア、韓国

などなど親米諸国群が、

アメリカの制止を無視して、

中国主導AIIBへの参加を決めた。


・韓国は2019年8月、アメリカ国務省、国防総省の制止を
無視して、「日韓GSOMIA破棄」を宣言した。

(同年11月、アメリカに脅された文在寅は、GSOMIA延長を
決定したが・・・。)


・イギリスは2020年1月、アメリカの制止を無視して、フ
ァーウェイの5G参入を許可した。

・フィリピンは2020年2月、「米軍地位協定を破棄する!」
と宣言した。

・ドイツは、アメリカの制止を無視して、独ロシアを直接
結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の建設
をつづけている。


こう見ると、アメリカと同盟国の関係はボロボロ。

だから、「やっぱ中国が勝つんちゃう?」と考えるのは当
然ですね。

そして、現在アメリカに反抗している同盟国群も、同じよ
うに考えている可能性がある。


しかし、私は「4つの理由」で、「結局アメリカが勝つ」
と考えています。

最初の三つは、「米中覇権戦争の行方」に書いたのと同じ
です。


●米中覇権戦争の行方 (北野幸伯著)

詳細は↓
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ですから、この本を読んだ方はスルーして、4番目の理由
に行ってください。

4番目の理由は、今回はじめて書きます。



▼第1の理由 中国経済が悪化し続けるのは必然だった



まず第1に、中国経済が悪化していくのは必然であること
が挙げられます。

これは、米中貿易戦争が始まらなくても、そうなる方向だ
った。

どういうことでしょうか?

中国のGDP成長率を見てみます。(IMFによる)


2008年9.6%、2009年9.2%、2010年10.61%、2011年9.5%。


この国は、2008年に起きたリーマン・ショックの影響が皆
無であるかのような成長を続けていました。

ところがその後を見ると、


2012年7.9%、2013年7.8%、2014年7.3%、2015年6.9%、
2016年6.72%、2017年6.86%、2018年6.57%。


着実に鈍化している。

実をいうと、2010年代末にむけて中国経済の成長が鈍化し
ていくことは、大昔から予測できたことです。

たとえば、私は2005年、34歳の時に、初めて本を出版しま
した。

その本「ボロボロになった覇権国家」127pには、こう書
いてあります。


<中国は2008・2010年の危機を乗り越え、初めは安くてよ
い製品を供給する「世界の工場」として、その後は1億300
0万人の富裕層を抱える巨大市場として、2020年ぐらいま
で成長を続けるでしょう。>


2005年の時点で、中国は2008〜2010年の危機を乗り越え、
成長を続けるが、それも2020年までと予想していた。

なぜこういう予測をしたのでしょうか?

根拠は、「国家ライフサイクル論」です。

「国家ライフサイクル論」では、国のある体制にも人間の
「生老病死」のようなサイクルがあると見る。

具体的には、大きく「移行期=混乱期」「成長期」「成熟
期」「衰退期」に分けることができます。

まず、前の体制からの「移行期」は、混乱が続いている。

しかし、有能なリーダーが出て政治の混乱を終わらせ、か
つ正しい経済政策を行うと、「成長期」に突入する。

中国は、安い人件費を武器に「安かろう悪かろう」と批判
されながらも急成長。

しかし、人件費が高くなるにつれ、成長率は鈍化する。

やがて企業は、より労働力の安い外国に生産拠点を移すよ
うになります。

こうして、成長期は終わり、低成長の成熟期がやってくる。

日本と中国の国家ライフサイクルを比較すると、中国は、
日本から約30年遅れていることがわかります。 


 1950年代、日本、成長期に突入。
 1980年代、中国、トウ小平改革で成長期に突入。

 1960年代、日本、「安かろう悪かろう」と揶揄されなが
らも急成長。
 1990年代、中国、「安かろう悪かろう」と揶揄されなが
らも急成長。

 1970年代、日本、「世界の工場」になる。
 2000年代、中国、「世界の工場」になる。

 1980年代、「日本が米国を追い越す」と多くの人が確信。
 2010年代、「中国が米国を追い越す」と多くの人が確信。


この「パラレル状態」が続くと仮定すると、2020年代から
の中国は以下のようになります。


 1990年代、日本、「バブル崩壊」から「暗黒の20年」に
突入。

 2020年代、中国、「暗黒の20年」に突入?


日本政府が尖閣を国有化した2012年、日中関係は「戦後最
悪」になった。

それで日本では、生産拠点を中国の他にもつくる「チャイ
ナプラスワン」という考えが一般化しました。

日中関係の悪化が直接的原因でしたが、中国の人件費が高
騰し、利益が出にくくなったことが長期的理由でした。


外国企業が逃げ出す。



これは、国家ライフサイクル論では、まさに「成長期後期
」の典型的現象。

つまり、米中貿易戦争が始まらなくても、中国経済の栄華
は終わりつつあった。

結論を書くとこうなります。



国家ライフサイクルどおり、中国の経済的繁栄は終わりつ
つあった。

米中貿易戦争は、この繁栄終了のプロセスを加速させるだ
ろう。



▼第2の理由 脆弱な中国の政治体制



第2の理由は、中国の政治体制が脆弱であること。

ご存じの通り、中国の政治体制は、共産党の一党独裁です。

つまり、民主主義国家にあるような、「選挙による政権交
代システム」がない。これは、非常に重大な欠陥です。

理解しやすいように、アメリカと比較してみましょう。

黒人と白人のハーフ・オバマ前大統領の誕生は、まさに「
革命」でした。

ケニア人を父に持つ男性が、WASP(白人、アングロサ
クソン、プロテスタント)が支配する国のトップになった
のですから。

しかも、このプロセスは、選挙を通して、あっさり実現し
ました。

これが、アメリカの強さであり、安定性です。


日本でも、自民党が増長し悪政を行うようになると、時々
政権交代が起こります。

しかし、交代は選挙によって行われ,流血の事態は起こら
ない。

これが、日本の強さと安定性。

実際の革命なしで、平和裏に「革命的」なことを起こせる。

これが、民主主義国家の強さです。


ところが中国では、そうはいかない。

中国人が「政権交代」を望むなら、革命を起こすしか方法
がありません。

選挙で選ばれたことがない共産党は、これまで2つの「正
統性」を確保してきました。

1つは、国民党を駆逐して、「中華人民共和国」を建国し
たこと。

2つ目は、奇跡的経済成長を実現したこと。


ところが、既述のように、中国の経済成長は終わりつつあ
る。

それで、共産党が勝手に中国を支配できる「正統性」はな
くなりつつある。

今後、中国経済は必然的に悪化していきます。


そして、その責任は、共産党、特に独裁者・習近平にある
と認識されるでしょう。

(中国政府は、「貿易戦争を始めたアメリカが悪い」と国
民に説明するでしょうが。)


1990年代初めのバブル崩壊後、日本の政界は混乱しました。

そして、1993年、日本新党の細川護熙氏が総理大臣に就任。

38年間続いた自民党時代は終焉した。

2020年代、中国の政界も、景気悪化で混乱することになる
でしょう。 

選挙による政権交代システムがない中国は、1990年代の日
本以上の大混乱に陥る可能性が高いのです。



▼第3の理由 戦闘なしの戦争で、中国は勝てない



既述のように、現在多方面で、米中の争いが起きています。

それらは、すべて「覇権戦争」の一環。

情報戦では、アメリカが圧倒的に有利です。

しかし、外交戦では、中国が現状優勢。

トランプは、「アメリカ・ファースト」で他国と良好な関
係を築くことにほとんど関心を持っていないように見えま
す。

しかし、長期的に見ると、外交戦でも中国は不利になって
いくことが予想されます。

理由は、中国経済が長期的に悪化していくこと。


考えてみてください。

中国が、人権侵害超大国であることは、世界中の誰もが知
っています。

それでも、日本と欧米は、この国の人権問題について、ほ
とんど触れなかった。

なぜでしょうか?


そう、中国と関わっていると「儲かるから」です。

つまり、日本も欧米も、いや全世界が、金 > 人権とい
うことで、中国に優しかった。

しかし、中国の経済成長率は、これから徐々に鈍化し、お
金はどんどん無くなっていきます。

そう、中国は今まで、「お金がたっぷりある人権侵害国家」
だった。

ところがこれからは、徐々に「お金があまりない人権侵害
国家」になっていく。

歴史が証明しているように、「お金がたっぷりある人権侵
害国家」とつきあいたい国、企業、人はたくさんある。

しかし、「お金があまりない人権侵害国家」とつきあいた
い国、企業、人は、ほとんどいないのです。

近い将来、中国に関しては、金 > 人権から、人権 >
 金 に変わっていくでしょう。

世界の国々は、アメリカか、金のない中国かと聞かれれば
、ほとんどの国がアメリカを選択することになるでしょう。


そして、経済戦。

ファーウェイ問題は、あまりうまくいっていないようです
が、関税戦争でアメリカは、中国に大打撃を与えている。

ここまでをまとめると。


・中国経済は、米中貿易戦争がなくても悪化していくトレ
ンドである。

・中国経済は、米中貿易戦争で悪化のスピードが加速する。

・不況で、中国の政治は不安定化する。

・民主的政権交代システムがない中国では、クーデター、
革命が起こりやすくなる。

・核大国である米中の「戦争」は、情報戦、外交戦、経済
戦がメインになるが、中国は米国に勝てない。


となります。



▼第4の理由 中国は体制崩壊するが、アメリカは体制崩
壊しない



ここまでは、「米中覇権戦争の行方」に書いたことと同じ
です。

もう一つ、重要な理由をあげておきましょう。

(2番目の理由に似ていますが。)


米中は、共に核大国。

だから、戦争は、「戦闘以外の形」がメインになる。

米軍が北京を占領するとか、人民解放軍がワシントンを占
領するといった事態は想像できません。

両国の指導者は、そうなる前に「核兵器をぶっ放す」でし
ょう。

そうなれば、米中だけでなく、人類消滅の危機です。


情報戦、外交戦、経済戦で、中国がアメリカに勝利したと
します。

それで、アメリカに何が起こるのでしょうか?

はっきりいえば、「何も起こらない」。

トランプが選挙で負ける?

あるいは、トランプの次の共和党候補が、民主党候補にや
ぶれる?

実質的影響は、その程度です。

「中国が勝利した」と書きましたが、実をいうと、中国が
アメリカに「勝利した」とどの時点でいえるのか・・・。

思い出してみましょう。

1970年代、アメリカは、米ソ冷戦でとても劣勢でした。

世界中の人たちが、「アメリカはもうダメだ。これからは
ソ連の時代だ」と考えていた。

しかし、アメリカは崩壊しませんでした。

ただ、大統領が弱虫カーターさんから、レーガンに代わっ
ただけです。

そう、アメリカは「劣勢」でも、「体制チェンジ」は起こ
らない。


(政権チェンジは起こる。)

体制チェンジが起こらないので、「負けが確定しない」の
です。


ですが、情報戦、外交戦、経済戦でアメリカが勝利したら


この時の影響をイメージすることはできます。

そう、ソ連の時と同じですね。

冷戦で負けたソ連は、15の国に分裂して消滅しました。

そして、共産党の一党独裁体制は崩壊した。


中国は?

中国も、米中覇権戦争に負けて、「共産党の一党独裁体制
が崩壊する」事態は、イメージできます。

その時、ソ連のように分裂するでしょうか?

それは、まだわかりません。


アメリカは、中国に劣勢であったとしても、実質何も起こ
らない。

一方、中国が負ければ、共産党一党独裁体制が崩壊する。

これで、はっきり「負け」が確定します。


アメリカは、現状劣勢に見えます。

しかし、以上4つの理由で、結局アメリカが勝つでしょう。


今、「中国が勝つのでは?」と考えている人は、第2次大
戦中のことを思い出してください。

ナチスドイツは、序盤戦、ものすごい勢いで勝利を積み
上げていました。

この国は、大国フランスを一か月で降伏させるほど強力だ
ったのです。

日本は、それで勘違いし、ナチスドイツの同盟国になって
しまった。

つまり、「負ける側」についてしまった。


今、日本政府は、同じ間違いを犯そうとしています。

私たちは、力を尽くして、日本が中国ではなく、アメリカ
につくようにするべきなのです。








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