ロシア政治経済ジャーナル No.732

2011/5/5号

★日本を変革したい人へのメッセージ〜いつかきた道へいかないために

 

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       ロシア政治経済ジャーナル No.732

                         2011/5/5号

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★日本を変革したい人へのメッセージ〜いつかきた道へいかないた
めに


全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!

北野です。



1990年のバブル崩壊からはじまった「暗黒の20年」。

2008年からはじまった「100年に1度の大不況」。

2011年3月の巨大地震・巨大津波・原発事故。



まったく日本人にはナーバスな時代ですが。。。

しかし、RPEのスーパーエリート読者の皆さまは、「日本を立て直
すぞ!」という気概に満ちていることでしょう。

今回は、「日本を改革するぞ!」と意欲に燃えている人たちへの
メッセージです。


▼日本の栄光


「歴史は繰り返す」といわれます。

実際には繰り返しませんが、過去とよく似た現象が起こることは確
かにあります。


ちょっと日本の歴史をふりかえってみましょう。

1868年、明治維新。

維新の英雄たちは、今の政治家さんたちと違って決断力がありまし
た。

「革命的」政策を次々と断行していきます。

たとえば、


・1869年、版籍奉還(諸大名は、領地と領民を天皇陛下にお返しす
る)

・1871年、廃藩置県(藩を廃して、県・府とする。中央集権化)

・1870〜71年、四民平等(士農工商の身分制度を廃止)



こうした改革を快く思わない人々もいました。

一番怒っていたのは、武士階級。

なんといっても、「武士」という特権階級自体が消滅するのですから。


それで、全国で士族の反乱が起こってきます。

たとえば、


1876年、神風連の乱、萩の乱、秋月の乱

1877年、西南戦争


維新の英雄・西郷隆盛が、西南戦争で敗れた。

これで、旧士族の反乱は終わります。

明治の日本は、ようやく「移行期」を突き抜けたということなので
しょう。


そして、成長期がはじまります。

1880年代には、内閣・議会・大日本帝国憲法ができた。


1894年、日清戦争で勝利

日本は、アジアの最強国になります。


1904〜05年、日ロ戦争に勝利

日本は白人の大国、世界最大の陸軍国ロシアに勝利。

全世界の非白人民族に大きな希望を与えます。

日本は、「人類皆平等」に大きな役割をはたしたのです。


1914〜1918年、第1次世界大戦

主戦場は欧州だったので、日本は楽勝でした。


1920年、国際連盟発足

日本は、イギリス、フランス、イタリアと共に常任理事国に。



↑どうですか、これ?

自分の国ながら誇らしいではありませんか。


しかし、ここから日本の没落がはじまっていきます。



▼日本の没落


第1次大戦中、日本は戦争中にもかかわらず空前の好景気にわいて
いました。

なんといっても、先進工業国のイギリス、フランス、ドイツが死闘をくり
ひろげていて商売どころではない。

日本はその穴を埋める形で欧州および世界に物を売りまくったのです。


しかし、1918年に戦争が終わると、景気は悪化していきます。

1920年は、国際連盟ができ、日本が常任理事国になっためでたい年。

ところが、景気は悪化しつづけていたのです。


1923年、関東大震災

死者・行方不明者10万人以上(!)という大災害でした。


1927年、昭和金融恐慌


1929年、アメリカ発世界恐慌



どうです?

1920年以前と以降とでは、まったく別の国のようですね。

とにかく悪いことがどんどんどんどん起こってくる。


さて、アメリカ発で世界恐慌が起こりました。

アメリカ、イギリス、フランスなどは、「ブロック経済圏」をつくるこ
とで乗り切ろうとします。

他の大国を見ると、ドイツではナチスが躍進。

スターリンのソ連は、世界経済と分離していたため、恐慌の影
響を受けませんでした。



で、日本はどうしたか?

日本は、中国、満州に進出することで、この危機を乗り切ろうと
したのです。

1932年、日本は傀儡国家・満州国を成立させます。



国際連盟は、日本による満州国建設を「侵略だ!」と非難。

日本は1933年、「満州問題」が理由で、国際連盟を脱退しました。


後は皆さん、ご存じのとおり、戦争にまっしぐらです。


1937年、日中戦争開始

1939年、第2次世界大戦勃発

1941年、太平洋戦争はじまる

1945年、敗戦


こうして、明治維新からはじまった一つの「国家ライフサイクル」が
おわったのです。

その期間77年。

もっと詳細に見てみると、

1868年(明治維新)〜1877年(西南戦争)=移行期

1878 〜 1918〜20年=成長期(40〜42年)

1920〜1945=成熟期・衰退期(25年)


となります。


▼日本の復活


戦後、日本の大改革はアメリカGHQによって行われました。

それで、反抗する勢力もなく、移行期はきわめて速やか穏やかだ
ったのです。

どんな改革が行われたのでしょうか?


1945年、財閥解体

1946年、農地改革

1946年、日本国憲法発布

等々。


1950年、朝鮮戦争が勃発し、日本は一気に好景気になっていきま
す。

こうして、戦後日本の移行期は速やかに終わり、以後40年の長い
成長期に突入していきます。


戦後日本の成長期=1950〜1990年。


日本は、また世界を驚愕させました。

戦後の焼け野原から、「アッと」いう間に、世界第2の経済大国にな
ってしまったのです。

日本はまたもや、世界の人々(特に非白人国家)大きな希望をあた
えました。

しかし、1990年バブル崩壊。


明治維新から第1次大戦終結まで日本はイケイケだった。

ところがその後は別の国であるかのように、悪いことがつづき破滅
にむかった。


今回は、1950〜1990年まで日本はイケイケだった。

その後は、まったく別の国であるかのように転落していったのです。


▼日本はいつまで沈みつづける?


いったいいつまで日本は転落しつづけるのでしょうか?


1918年に前回の成長期が終わり、1945年で衰退期が終わった。

この期間27年間。


1990年に今回の成長期が終わった。

これに27年プラスすると、2017年。


もう一つ。

明治維新1868年からはじまったライフサイクルは1945年終わっ
た。

この期間77年間。


今回のライフサイクルは1945年からはじまった。

これに77年足すと2022年。


世界恐慌は1929年。

第2次大戦終結1945年まで16年。

今回の「100年に1度の大不況」は2008年。

これに16年足すと2024年。


いろいろな見方があるのでなんともいえませんが、はっきりわかる
のは、日本は今後しばらく落ちつづけていくということです。


「・・・・・北野さん、ひどいです。なんとかならないのですか?」


なりません。

でも仕方ない。

私は、05年出版の「ボロボロになった覇権国家」の中で、アメリカ
の没落を予測しました。

「アメリカの覇権は永遠につづく!」という人がほとんどでしたが、
私はホントのことを書きました。


08年出版の「隷属国家日本の岐路」の中で、「尖閣諸島で紛争が
起こる」と書きました。

「中国の平和主義は本物だ!」とは書きませんでした。 



もし私が祖国を愛するあまり、「ご安心ください。来年からバブルに
なりますよ」といえば、皆さん気持ちいいでしょう?

しかし、私は時と共に信用を失ってしまうでしょう。

だから、いつもホントのことを書くしかない。


ライフサイクルは絶対。

イギリスのチャーチルがいくら優秀でも、ビクトリア女王時代の栄
光を取り戻すことはできなかった。

サッチャーさんがいくら優秀でも、チャーチル時代のパワーをとり
もどすことはできなかった。

これが真実。


じゃあ、日本に救いはないのでしょうか?

あるんです。

同じ衰退期でも、すべての国が同じ運命になるわけではありま
せん。

たとえば、幕末日本と、同時期の清(中国)。


共に衰退期でしたが、日本は見事に生まれかわり独立を保った。

一方清は、欧米日に分割統治されるような悲惨な状態になりま
した。



日本と清、何が違ったの?

ライフサイクルの位置は同じでしたが、



「人の質」
 ̄ ̄ ̄ ̄


が違ったのです。

やはり、歴史で「人」が果たす役割も重要なのです。




▼常勝日本はなぜ敗れた?


日本にはメチャクチャ楽観的な人がいて、日本人に元気と勇気をあ
たえています。

とはいえ、


「日本は一人当たりGDPで世界17位まで落ちた」


とか


「サラリーマンの平均年収は10年以上下がりつづけている」


とか、否定できない事実もある。

それで、「日本は全然大丈夫です!」といってみても、庶民の感覚
とズレテしまうことでしょう。



ところで、私たちが今しなければならないのは、日清・日ロ・第1次
大戦と「常勝」だった日本が


なぜ第2次大戦で敗れたのか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

を分析することです。


これについて、「日本は全然悪くありません。悪のルーズベルトが
意図的に日本を追いつめ、参戦させたのです!」という説がありま
す。

確かに、そういう側面もあるでしょう。

たとえそうであっても、分析は重要です。

なぜかというと、分析し反省しなければ、また同じ目に会う可能性
がある。



一体なぜ日本は負けたのでしょうか?

答えは、負ける方についたからです。

すなわち、ドイツ・イタリアですね。


そして日本は、アメリカ、イギリス、ソ連、中国 という4大国を敵に
まわして戦った。

勝てるはずないんです。

確かに日本は、中国(清)やロシアに勝ちましたよ。

しかし、こんな世界の強国連合を敵にまわして勝てるはずがない。


一体なんでこんなことになっちゃったのか?

歴史をさかのぼってみると、「満州国建国」と「国際連盟脱退」にい
きつきます。

これで日本は孤立した。

そして、欧州で同じく孤立していったドイツ、イタリアとつるむハメに
なったのです。


▼「正論」でも勝てない


もう少し「満州問題」を掘り下げてみましょう。

日本が満州国をつくったのは1932年。

国際連盟は、【イギリス人】リットンさんを代表とする調査団を満州
に送ります。

結果は、「これは日本の中国に対する侵略である!」でした。



考えてみましょう。

リットンさんはイギリス人です。

イギリスは、世界一広大な植民地をつくった国です。

それこそ世界中に植民地があり、「日の沈まない国」とよばれたの
です。


世界中を侵略し、現地人を虐殺し、植民地をつくったイギリスに、


「日本の満州国建設は【侵略】である」


なんていう権利あるの?ということです。

皆さんどう思います?

当時の政府の人や、国民は、あまりの理不尽さに激怒したに違いな
いのです。


でもですよ、

結局、イギリスは勝ち、日本は大敗した。


「正論」が勝つとは限らない。


こういう状況は今も変わっていません。

たとえば、アメリカのイラク攻撃の口実は、全部ウソだったことがバ
レています。

しかし、フセインは捕まり処刑されました。

ウソをついたブッシュは、気楽に暮らしています。


数日前、NATOは、カダフィの息子と孫を殺しました。

プーチンは、「誰が裁判なしでカダフィ一家を殺害する権利をNAT
Oに与えたのか?!」と怒っていました。

これは正論でしょう?

しかし、耳を傾ける人はいません。


▼なぜイギリスは日本を見捨てたのか?


感情論は廃して、合理的な話をしましょう。

なぜイギリスは日本の満州国に反対したのでしょうか?

実をいうと、日本は明治維新後、イギリスとはずっと良好な関係を
保っていたのです。


そもそもイギリスはグラバーさんを中心に、幕末から薩摩・長州を
支援していました。

日本は、イギリスとドイツをお手本に、近代国家に生まれかわって
いきます。

1902年、イギリスは唯一の同盟国として日本を選びました。
(日英同盟)


1904年、日ロ戦争勃発。

同盟国イギリスは、できるかぎりの支援を日本にしました。

もちろん、「ロシアが消滅してくれたらうれしい」というイギリスの国
益とも合致していたからですが。。。

いずれにしても、ロシアと戦う日本のバックには、世界の覇権国家
がいて、援助していたのです。

これは大きい。

ところが。



1914年、第1次大戦勃発。

ドイツの猛攻に苦戦するイギリスは、同盟国日本に「陸軍を派遣し
てくれ!」と懇願します。

しかし、日本は4年間の戦争中、欧州に兵を送らなかったのです。

イギリスは、これで「日英同盟」に幻滅しました。

商売もそうですが、同盟も「ギブ アンド テイク」である必要があり
ます。

イギリスは、「日ロ戦争の時は助けたが、俺たちが苦しい時は助け
てくれなかった」と、恨みを持った。

「こんな同盟なんて俺たちにメリットない」

ということで、1922年イギリスは「日英同盟」の破棄を決めます。


これが、日本敗戦の遠因になったのです。

もし、第1次大戦時、日本が欧州に陸軍を派遣し、イギリスを助け
ていればどうなったでしょうか?

満州国ができ、イギリス人リットンさんが視察に来た。

その時、日本は「満州国は確かに日本の傀儡です。しかし、この
国はイギリスの国益にも合致します。

日英最大の敵は『共産ソ連』でしょう。

満州国は、ソ連の膨張を阻止するためにつくったのです」


とかいえばいい。

日本を信頼しているリットンさんは、「ごもっとも」といい、国際連
盟で「あれは合法ですよ」と報告したかもしれません。


第2次大戦が起こった時、日本は「日英同盟」により、ドイツ、イ
タリアに宣戦布告。

アメリカ、イギリス、ソ連、中国の4大国を相手に勝ち目のない戦
をする必要もなかったでしょう。


▼日本は同じ過ちを繰り返すな


私は常々、「日本は、アメリカ幕府の天領でも、中国の小日本省
でもなく、『自立国家』にならなければならない」と主張しています。


しかし、「自立」と「孤立」は違うのです。

日本は1920〜30年代、孤立の道を歩み、大敗北を喫しました。

同じあやまちを繰り返してはいけないのです。


今、日本では、ひそかに「孤立主義」「民族主義」への傾斜がはじ
まっています。


まず、中国は「尖閣問題」があるので大嫌い。

ロシアは、「北方領土問題」があるので大嫌い。

韓国は「竹島問題」があるので大嫌い。


まあ、これは今までと変わらないですね。

しかし、最近ネットを見ていると、


「今回の地震は、アメリカが地震兵器を使って起こした」


というウワサがまことしやかに流れており、「反米の機運」がたか
まってきています。

アメリカも敵、ロシアも敵、中国も敵。


なんだか「第2次大戦前に似てきたぞ」と思うのは私だけでしょう
か?

それに最近よく聞く、民主党と自民党の「大連立」。

そういえば、昔「大政翼賛会」とかいうのがありましたね〜。


さらに、最近は「ネット言論への規制を強めよう」という方向へも
すすんでいるようです。


▼核をもつにしても


さて、戦前と同じで「孤立主義」が強まりつつある日本。

今回「満州国」の役割を果たすのはなんでしょうか?


私は「核兵器」だと思います。


「日本の周りを見れば、アメリカ、ロシア、中国、北朝鮮が核兵器
を持っている。

日本だけ核兵器をもたないのは理不尽ではないか!?」


これ、「正論」なんですよ。

でも、


「イギリスは、世界最大の植民地国家である。

日本の満州国建国を非難できる権利などない!」


これも正論だったことを思い出してください。


もし、日本が一国で核兵器保有を決めれば、必ず国連安保理常任
理事国

アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア

が一体化して反対します。

あらゆる制裁をかしてくることでしょう。


では、どうすればいいのでしょうか?

日本は核を持つにしても拒否権をもつアメリカ、イギリス、フランス
を味方につける必要がある。


ちなみにイスラエルは核兵器をもっていますが、アメリカが常に拒
否権を行使し守るので、なんの制裁もうけません。

一方、イランは核兵器を「もっていません」が、孤立しているのでな
んやかんやとイチャモンをつけられ、制裁で苦しんでいます。


日本は、「正論」に固執し、北朝鮮やイランのようになってはいけない
のです。


ちなみに、当時の「日英同盟」に匹敵するのは当然「日米安保」です。

アメリカはとびきりの巨悪かもしれませんが、一緒にいれば、悪の
中国・ロシアは怖くありません。

しかし、それは今の話。

ライフサイクルを見るとアメリカの衰退は不可避です。

日本は、アメリカの衰退分を補完する形で、徐々に自主防衛能力を
強めていけばいい。

そうすれば、アメリカも文句をいえず、中国も手出しできません。




私はこの号の題名を


「日本を変革したい人へのメッセージ」


としました。

私は、日本を変革する気概のある皆さんに、歴史を学んで欲しいの
です。

そして、愛国心や義憤のあまり「いつか来た道」を再びいかないよう
、細心の注意を払っていただきたいと思います。


▼あの日の龍馬のように


1853年、アメリカの黒船艦隊がやってきました。

この時、いろいろなタイプの人にわかれました。


・幕府 〜 現実主義=敗北主義

幕府は、「黒船を持つアメリカには絶対勝てない」と悟り、サッサと
開国を決めます。

その後も欧米列強のいいなり。

幕府がそのまま政権にいれば、日本はイギリスかフランスの植民
地になっていたでしょう。

今の日本に当てはめれば、「日本はアメリカには逆らえませんよ」
とあきらめている政治家。



・過激志士 〜 理想主義=非現実的

腰ぬけ幕府に怒り、愛国心に燃える尊王の志士たちが立ち上がり
ました。

彼らは、「異人に日本刀の切れ味をみせてやる!」と盛り上がって
いた。

そう、「日本刀で黒船に勝てる」と思っていたのです。

ありえませんね。

しかし、「祖国愛」は彼らが一番強かったのでしょう。



・勝海舟、龍馬=理想を目指す現実主義

勝海舟や龍馬は、「このままでは欧米に勝てない」ことを知ってい
ました。

しかし、幕府のように「敗北主義」「無抵抗主義」ではありませんで
した。

二人は、現実的方策を考えます。


1、「日本が欧米に勝てないのは黒船がないからだ」

2、日本も黒船艦隊をつくれば、欧米の植民地にならない

3、黒船をつくるには金がいる

4、開国し貿易をすることで金を稼ぎ、それで黒船艦隊をつくれば
いい


勝、龍馬の案は神戸海軍塾の閉鎖で挫折しましたが、結局後で実
現しました。


私たちもあの日の龍馬のように、あきらめず、非現実的にならず


現実を見据え、理想をめざしながら、


私たちの祖国を守っていきましょう。

(おわり)


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