ロシア政治経済ジャーナル No.648

2010/5/21号

★日本は「自由の国」「平等の国」どちらにむかうべき?

 

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       ロシア政治経済ジャーナル No.648

                         2010/5/21号

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★日本は「自由の国」「平等の国」どちらにむかうべき?


時事通信にこんな記事がありました。




<日本、27位に急落=国際競争力番付―スイス機関調査

5月20日20時5分配信 時事通信

 【ジュネーブ時事】スイスに本部を置く世界的なビジネススクール、
国際経営開発協会(IMD)は20日までに、世界58カ国・地域を対象と
した2010年版の国際競争力報告書を発表した。

日本は経済状況などの評価が低く、総合順位を前年の17位から27
位に大きく下げた。

 経済状況が39位(前年24位)に急落したほか、社会基盤が13位(
同5位)、民間部門の効率性が23位(同18位)と軒並み評価を下げた。>



この記事にはつづきがあります。

どの国が一位なのでしょうか?

詳しくは本文の終わりで。


▼自由と平等


フランス革命のスローガンは「自由」「平等」「博愛」でした。

博愛はいいとして、「自由」と「平等」は両立しないことがあります。


たとえば、「好きなようにお金稼いでくださいね!」と「自由」にさせれ
ば、


「Aさんは1カ月で1億円稼ぎました!」

「Bさんは1カ月で20万円しか稼ぎませんでした」

「Cさんは1カ月で400万円の借金をこしらえました」(涙)


等々、いろいろな結果になるでしょう。

ゼロからスタートした場合、


Aさんの資産は1億円

Bさんの資産は20万円

Cさんの資産はマイナス400万円


「自由」に金儲けをさせた結果、「不平等」になってしまった。



では、能力の違うAさん、Bさん、Cさんを平等にしようとすればど
うなるか?

これは、Aさん、Bさん、Cさんの稼いだ金を集めて、平等に分配
することになるでしょう。

当然、もっとも能力のあるAさんは「好きなだけ金を稼ぐ自由」を
制限され不満です。


このように「自由を与えれば不平等になる」「平等を目指せば、不
自由になる」。

それで、「どっちを重視するの?」という問題が常につきまとうわけ
です。



そして、「平等より自由を重視しよう」とつくられた国がアメリカ。

アメリカは、ジョン・ロックの哲学をベースにつくられた。

そして、ロックは「すべての人は生まれながらにして『生命』『財産』
『自由』の権利がある」と主張した。

要するに、アメリカという国は、誰でも「自由に財産を増やせる国」
といえる。

もちろん、当初はインディアンや黒人奴隷に「自由」はありませんで
した

しかし、時と共にその権利は、インディアン・黒人にも付与されるよ
うになっていったのです。



自由にさせたら、結果に不平等が生じ、貧富の差が拡大していきま
す。

アメリカは、「結果の不平等は本人の責任だから、仕方ない」と考え
るのです。

アメリカの平等は、「機会の平等」です。

つまり、誰にでも平等にチャンスがある。

白人でも黒人でもインディアンでも、努力すればいい大学にもはい
れるし、金持ちにもなれる。



一方「自由」よりも「平等」を重視した国が「ソ連」。

ソ連はマルクス主義をベースにつくられた。

マルクスの主張は、


「私有財産があれば、貧富の差ができる。

貧富の差ができると階級ができる。

階級ができると階級闘争が起こる。

諸悪の根源は「私有財産」だから、全部「共有財産」にしてしまえ!」


というもの。

そして、この国に「自由」はないかわりに「結果の平等」はあった
のです。

もちろん、相対的にですが。

ソ連時代は、医療も教育も全部無料だった。



さて、「自由」と「平等」どっちが大事なのでしょうか?

これ、両方とも大事なんです。

あんまり自由を重視しすぎると、「貧乏なのは自己責任。責任をと
って死ね!」なんて残酷な社会になる。

誰でも交通事故にあうとか、病気になるとか、貧乏になる可能性
はあります。

ですから、ある程度のセーフティ・ネットは絶対必要。


あんまり平等を重視しすぎると、有能な人は、「働いても働かなくて
もおんなじ。それならさぼろう」となる。

あるいは、「もう少し自由のある国へ移住しよう」となる。

ソ連が崩壊したのを見ても、これは実に深刻な問題であることがわ
かります。


▼ロシアの悲劇


以前にも触れましたが、ロシア人は本来優秀です。


億万長者になりたい人のバイブル


●「となりの億万長者」
(詳細は→ http://tinyurl.com/9u8x4  )


にこんな記述があります。



<どの人種が億万長者のトップにくるのだろう。に

1位はロシア系、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
それからスコットランド、ハンガリーと続く。

ロシア系アメリカ人は全米に1.1%しかいないのに、億万長者の
中では6.4%もいる。

ロシア系アメリカ人の22%は億万長者なのだ。

イギリス系の7.71%と比較するとこの数字は驚異的である。

ロシア系アメリカ人は全米個人資産の5%、1兆1000億ドルを所
有している!>(30p)



ところが、ロシアはアメリカより栄えていませんね。

これはどういうことかというと、「優秀な人がロシアから逃げちゃ
う」んです。

なぜかというと、ロシアには「自由」がない。


1917年にロシア革命(共産革命)が起こった。

共産主義は「私有財産」を否定する。

それで金持ちは「財産没収されたらたまらん」ということで、どん
どん亡命しちゃった。


もちろん、ソ連に残った優秀な人たちもいますよ。

その人たちは「インテリゲンツィアは人民の敵」とかいって粛清され
ちゃった。


1991年ソ連崩壊。

空前の経済危機がロシアを襲った。

それで、また優秀な人が大量に逃げ出した。


グーグルの創業者セルゲイ・ブリン。

彼はモスクワ生まれですが、6歳の時に家族がアメリカに移住した。

もし、彼がロシアに残っていたら絶対グーグルは生まれていません。



以前ご紹介した17歳の天才少年アンドレイ・テルノフスキー君。
(モスクワ在住)

3日間の労働で「チャット・ルーレット」というサイトを立ち上げた。

開設から3カ月で、訪問者が1日150万人に達した。

それで「36億円で売ってくれんか?」と買収のオファーがきている。

(詳しくはこちら↓
http://archive.mag2.com/0000012950/20100511232733000.html
2010/05/11 【RPE】★フリー(無料)の時代2〜3日の労働で36億
円の資産を築いた高校生【実話】 )



最近彼は、アメリカの投資家の招きで、訪米しています。

ところが、ロシア国内ではほとんど注目されていない。

全くマイナーな存在。

私は、テルノフスキー君は将来アメリカに引越すのではないかと思
っています。

ロシアにいたら成功できないでしょう。



このようにロシア人は本来高いポテンシャルをもっている。

しかし、自由のないロシアではなかなか成功できない。

それで、優秀な人はどんどん欧米に出ていってします。

これがロシアの悲劇。


▼才能がつぶされるメカニズム


まあ、「メカニズム」なんて大げさな話じゃないのですが。

「自由」がないと、なんで才能がつぶされるかという話。


たとえば皆さん、奥さんに「今夜のおかずは何がいい?」と聞かれ
たとします。

あなたは、「天丼が食いたい」といった。

すると奥さんは、「天丼よりウナギがいいわね」といい、夕飯はウ
ナギになった。


翌日も同じ質問をされ、「とんこつラーメンが食べたい」と答えた。

すると奥さんは、「ラーメンよりパスタがいいわね」といい、夕飯は
パスタになった。


翌々日も同じ質問をされ、「カレーが食べたい」と答えた。

すると奥さんは、「カレーより、鍋ね!」といい、夕飯は鍋になった。


4日目にも同じ質問をされた。

あなたは、意見が尊重されないとわかったので、「なんでもいいよ
!」と答えた。

以後、あなたは「夕飯」について考えることをやめました。



これは家族内の話ですが、会社でも国家でも同じこと。

家族でも会社でも国家でも、「自分の意見が尊重されない」「決定
権がない」「自由が圧殺されている」とわかれば二つの選択肢が
あります。


1、我慢する、あきらめる

2、他の選択肢を探す


夫婦の場合なら、「外食が増える」「うまいものを食わしてくれる愛
人をつくる」「離婚する」等々。

会社なら、「転職する」。

国家なら、別のもっと自由な国に引っ越す。



大事なのは、能力がある人ほど、「転職」したり「移民」したりして、
自己実現を目指す傾向があるということ。


先に挙げたテルノフスキー君がロシアで起業しようとすれば、いろ
いろめんどくさいことが多い。

それなら、「アメリカに引っ越して起業しよう」なんてことになる可
能性が高いのです。


▼日本は「自由」の国を目指せ


さて、日本。

日本の国策として絶対間違っていると思うことがあります。

他の国は「投資を呼び込む」ために一生懸命です。

ところが、日本政府は「グローバル化だから中国にでましょう。イ
ンドにでましょう」などと企業に推奨している。


日本企業が中国に出る。

すると、中国人の雇用は増え、中国は税収も増えます。

一方、日本人の失業者は増え、税収は減ります。

私はなんで、政府が「日本企業は外にでましょう」とすすめている
のかさっぱりわからない。


むしろ、「世界から優秀な人材が集まる、世界の企業が来たくなる、
そんな日本をつくります」と決意するべきなのです。

「グローバル化の時代だから、どんどん外に出ましょう」ではなく、

「グローバル化の時代だから、どんどん優秀な人・優秀な企業にき
てもらいましょう」

とメンタリティーを変える必要がある。


そのためにはどうすればいいか?


これは簡単で、税金を下げればいい。


「財政が破たんしそうなのに、そんなことできるか!」と思いますね。


こうすればいい。

現在、消費税収は年間10兆円。

法人税収も年間10兆円だそうです。

二つあわせて計20兆円。


それなら、消費税を5%から10%にすれば年間20兆円になる。

法人税を現在の40%から20%まで引き下げれば、年間5兆円。

二つあわせて計25兆円。


しかし、サッチャーさんのイギリス、レーガンさんのアメリカ、プーチ
ンのロシアなどの例をみると、


「減税したら逆に税収がのびた」


というケースが多々あります。

日本も法人税を下げれば、逆に税収は増えると思います。


もちろん消費税を急激にひきあげれば、消費が激減して景気が悪
化するリスクが高い。

ですから、消費税アップと法人税引き下げ、セットで徐々にやって
いけばいい。



(●【要注意!】
私は不景気な現時点での消費税引き上げには断固反対の立場で
す。

消費税を引き上げて日本経済を奈落の底に突き落とした橋本政権
のまちがいを繰り返すべきではない。

今しているのは長期的な話。)




本文冒頭で、時事通信の記事を転載しました。



<日本、27位に急落=国際競争力番付―スイス機関調査>



この記事にはつづきがあります。

一体競争力世界1位はどの国なのでしょうか?



<首位は前年3位のシンガポール、2位は前年と同じ香港で、これ
まで1位だった米国は3位に後退した。

報告書は「シンガポールと香港は経済状況の大きな変動に見舞わ
れたが、世界的な経済危機後に強い回復力を示した」と評価した。>



1位はシンガポール、2位は香港。


シンガポールの法人税率は、たったの17%。

香港の法人税率は、たったの16.5%。


リーマンショック後「社会主義化した!」と揶揄されるアメリカは、1位
から3位に後退しています。


こんなこと書くと(貧富の差がひろがるだろ!と)怒られるかもしれま
せんが、私は


・消費税10%

・法人税10%

・所得税10%


くらいが適正だと思います。


日本は世界一安全な国。

しかも、森林率は世界2位で、自然の豊かな美しい国。


これで税金が安くなれば、世界中から金持ち・優秀な人が殺到する
ことでしょう。


「平等の国」を目指したソ連は崩壊しました。

中共は、平等の国を放棄し、資本主義化することでサバイバルしま
した。

悪平等が蔓延し、「暗黒の70年代」だったアメリカは、レーガンさんの
自由化・減税でよみがえりました。

社会主義化が進み70年代「欧州のお荷物」とよばれたイギリスは、
サッチャーさんの自由化・減税でよみがえりました。



日本も税金を下げることで、民間の力を活性化するべきなのです。



今回は「日本の競争力を回復する」話でした。


ところで、人類はどっちの方向にむかっているのでしょうか?

アメリカ 対 中国、戦いの帰結は?

日本はどうなるの?



これらの疑問に、北野の新刊「国家の気概」でバッチリお答えして
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(おわり)


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