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     【裏】ロシア政治経済ジャーナル No.375


                       2025/2/17


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★故ナワリヌイが完全破壊したプーチン神話



全世界の裏RPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。



「プーチン最大の敵」として知られるアレクセイ・ナワリヌイは
2024年2月16日、獄死しました。

1年と1日前です。

『BBC NEWS  JAPAN』2024年2月16日付。



〈ロシア野党指導者ナワリヌイ氏が死亡=ロシア刑務所当局
2024年2/16(金) 22:34配信BBC News
ロシアの刑務所当局は16日、近年のロシアで最も著名な野党指導者だった
アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が、収監されていた北極圏の刑務所で死亡したと
発表した。〉
ーー


このニュースを聞いて


「嗚呼、ナワリヌイが死んでもう1年経ったのか~~~」


と嘆き、涙を流す日本人は少ないと思います。

というのも、あまり日本では知られていないからです。

しかし、28年モスクワに住んでいた私から見ると、
ナワリヌイは間違いなく、【 プーチン最大の敵 】でした。

なぜ?


ナワリヌイは1976年生まれ。

ロシア一の政治系ユーチューバーでした。

チャンネル登録者数は、2025年2月時点で637万人。

大きな影響力を持っていた「反汚職基金」(FBK)の創設者でもあります。

彼の名を全世界にとどろかせたのは、1本の動画でした。

2017年3月に投稿した、


「オン・ヴァム・ニ・ディモン」


(彼は、あなたのディモンじゃないよ、意味は、メドベージェフは、
君が思っているほど、いいやつじゃないよ)

という動画は、

メドベージェフ首相(当時)が複数の超巨大別荘を所有していることを暴露していました。

これまでに、再生回数は4700万回を超えています。

@実際の動画はこちら。↓
https://www.youtube.com/watch?v=qrwlk7_GF9g&t=1s


ロシア語の動画なので、見たのはほとんどロシア人でしょう。

この国の人口は、約1億4600万人なので、
ロシア人の約三人に一人が見たことになります。

それで、「真相究明」を求める大規模デモが、ロシア全土で起こってきた。

ロシア政府は、デモ参加者の要求を、徹底的に無視しつづけることで、
この危機を乗り切ります。

しかし、国民の多くがプーチン政権に幻滅したことは間違いありません。


プーチンはこの事件で、「ネットメディアのパワー」を実感したのでしょう。

ロシアのテレビは、2000年代からプーチンの支配下にあります。

テレビで、プーチンの悪口は、一切聞かれません。

では、インターネットは、どうでしょうか?

プーチンは、ネットの影響力を過小評価していて、かなり自由があったのです。

そして、インターネットは、テレビとは真逆で「反プーチン派の勢力圏」になっていました。

ところが、ナワリヌイのメドベージェフ別荘群暴露動画以降、
ネット規制がどんどん厳しくなってきた。

そして、私自身の業務にも支障が出るようになってきました。

結果、私は2018年、「日本に完全帰国することを決意した」という流れです。

つまり、ナワリヌイの活動は、間接的に私の生活にも
大きな影響を与えたことになります。

こんな流れを見ると、ナワリヌイは、
「プーチン最大の敵」と言っても、過言ではありません。


さて、ナワリヌイは2020年8月20日、シベリアの都市トムスクから
モスクワに向かう旅客機の中で、毒殺されそうになりました。

飛行機は、オムスクに緊急着陸し、ナワリヌイは病院に運ばれた。

彼の妻ユリヤは、「ロシアの病院にいると殺される」と思い、ドイツでの治療を求めます。

8月22日朝、ナワリヌイは、オムスクの病院から、ドイツ、ベルリンに搬送されました。

飛行機は、ドイツのNGO「シネマ・フォー・ピース財団」が手配したと発表されています。

ドイツでの検査の結果、ナワリヌイ毒殺未遂に使われたのは、
神経剤ノビチョクであることが判明しました。

ノビチョクは、ソ連が開発した軍事用神経剤。

2018年に、ロシアの元二重スパイ・スクリパリと娘の
ユリヤ殺人未遂事件の時にも使用され、全世界に衝撃を与えました。


ドイツで一命をとりとめたナワリヌイは2020年12月14日、


「事件は解決された。
私は、私を殺そうとしたすべての人を知っている」


という動画を公開。

@実際の動画はこちら↓
https://www.youtube.com/watch?v=smhi6jts97I


この動画の中で、ナワリヌイは、実行犯8人の名前と写真を公開。

そして、「このグループに殺人の命令を出しているのは、プーチンだ」と断言しています。

動画の中で明らかにされていますが、
犯人捜しをしたのは、ナワリヌイ自身ではありません。

「ベリングキャット」という団体です。

ベリングキャットは2014年、イギリスで設立されました。

「ファクトチェック」と「オープンソースインテリジェンス」を専門にしている。

そのベリングキャットがナワリヌイに連絡をとり、
「君を殺そうとした人たちを見つけた」と話したそうです。

この調査結果は、ドイツの週刊誌『デア・シュピーゲル』、
スペインの日刊紙『エル・パイス』、アメリカCNNでも検証されました。

調査の結果、何がわかったのか?


・8人のFSB諜報員が、3年間ナワリヌイの尾行をつづけていた
(動画内で、8人の実名と顔写真が公開されている)。

・8人の人物は皆、「化学」あるいは「医学」の教育をうけており、
「ただの尾行」ではない。

・彼らは「シグナル科学センター」から化学兵器を受け取り、ナワリヌイ暗殺を試みた。

・8人のグループが、3年間ナワリヌイを追いつづけた。
これが、ボルトニコフFSB局長の許可なしで行われることはない。

・そして、ボルトニコフFSB局長が、プーチンの許可なしで、
この作戦を指示することはありえない。

・よって、毒殺指令を出したのは、「プーチン自身」である。


以上のような論理構成になっていました。

これに対し、プーチンは2020年12月17日の記者会見で、


「毒殺したければ、毒殺しただろう」


と語り、容疑を否認します。

つまり、「ナワリヌイが生きていることが、私(プーチン)が無関係な証拠だ」と。

日本人には理解不能ですが、ロシアでは、このロジックが通用します。

ロシア人の多くは、プーチンのこの言葉を聞いて、
「確かにその通りだ」と思ったのです。


2020年12月21日、ナワリヌイは、新たに


「私は、殺し屋に電話した、彼は〔犯行を〕認めた」


という動画を公開します。

@実際の動画はこちら。↓
https://www.youtube.com/watch?v=ibqiet6Bg38


ナワリヌイは、パトルシェフ元FSB長官、現安全保障会議書記の
補佐官マクシム・ウスティーノフと名乗り、実行犯の「容疑者」に電話しました。

そして、「容疑者」クドゥリャフツェフは、飛行機が緊急着陸したオムスクで、
ナワリヌイの服を回収し、毒が発見されないように洗ったことを認めたのです。

また、ナワリヌイの下着(パンツ)に毒が塗られたことを認めました
(彼自身が毒を塗ったわけではないが、計画を知っていました)。

さらに、クドゥリャフツェフは電話で、
「なぜナワリヌイはまだ生きているのか?」という質問に回答しています。

彼は、飛行機が緊急着陸せず、
「もう少し長く飛んでいれば」ナワリヌイは死んだだろうと語った。

ナワリヌイが生き延びたもう一つの理由は、緊急着陸した後すぐ救急車がかけつけ、
適切な治療をしてしまったからだと。

この電話で、プーチンの「毒殺したければ、毒殺しただろう」
というロジックが成立しないことになりました。

つまり、FSBは毒殺を試みて、「失敗した」と。

ナワリヌイが2020年12月に投稿した二つの動画は、
少なくともネットの民に、大きな衝撃を与えました。


2021年1月18日、ドイツからロシアに帰国したナワリヌイは、空港で逮捕されました。

翌1月19日、ナワリヌイの同志たちは、準備していた動画を公開。

その名は、


「プーチンのための宮殿。最大の賄賂の歴史」


簡単にいうと、黒海沿岸にある「プーチンの巨大別荘」に関する動画です。

@実際の動画はこちら。↓
https://www.youtube.com/watch?v=ipAnwilMncI&t=2205s


建設費用は、推定1400億円。

建物以外も入れた総敷地面積は、モナコの39倍だとか。

この動画はものすごいスピードで拡散され、
現在までに1億3400万人の人が見ています。

ロシア人の、「1.08人に一人」が見たことになります。

インターネットを使わない年配の人たち、子供たち以外は、
「ほとんど見た」といえる数でしょう。

これは、「プーチン神話」に対する最も強烈な攻撃でした。

なぜか?

日本人には理解しがたいですが、ロシア国民の多くは、


「プーチンは、真の愛国者で、クリーンな政治家だ」


と信じていたのです。

メドベージェフの汚職動画を見た後でも、
「周りは腐っているが、プーチンだけは違う」と思っていた。

ところが、この動画を見て、国民たちは
「プーチンクリーン神話」がウソだったことを悟った。

この時点で「プーチン神話は崩壊した」といえるでしょう。

今まで、ロシア国民の多くは、プーチンに対して「尊敬」「信頼」「愛」
といった感情をもっていました(これも、日本人には理解困難ですが)。

ところが、この動画を見てしまったら、
これらの感情を抱きつづけることは困難でしょう。


当時私は、(有料講座)「パワーゲーム」などで、


「これで神話による統治は難しくなる。
これからは『恐怖による統治の時代』になりますよ」


と語っていました。

予想通り、プーチンはその後、急速に凶暴化していきました。

プーチンがウクライナ侵攻を開始したのは、
この動画で神話が崩壊してから1年後でした。

偶然とは思えません。


何はともあれ、たった3本の動画でプーチン神話を根底から破壊したナワリヌイは、
獄死しました。

プーチンは、ナワリヌイが死んで「ホッ」としたことでしょう。

しかし、ナワリヌイが壊した神話は、もう元には戻りません。


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★押上さまからのメール


北野様

押上です。

RPEのおたよりコーナーで、【「選択的夫婦別姓制度」は「親子別姓制度」問題である」を取り上げて頂き、ありがとうございます!!

高市さんは、「選択的夫婦別姓制度」でなく「旧姓の通称使用についての法制度」を推進しようとされているのですが、こういう家族や共同体に関することについては、若い頃の経験が大切なのかなぁと最近思います。

岸田前総理や石破総理は広島、鳥取の選挙区の政治家ですが、世襲議員だからなのか、若くから東京の学校に行かれていますので、何か地方選挙区の政治家の感じがいまいちしません。。

一方、高市さんは奈良出身ということしか知らなかったのですが、最近、同じく奈良出身の京都大学教授の藤井聡先生との対談動画を観て、とても親しみを感じてファンになりました。

奈良での初デートの話、学生時代にヘビメタバンドのドラムをやっていたこと、松下政経塾に入る時に松下幸之助さんの面接を受けた時の思い出話など、とても面白かったです。

こちらの動画です(38分)
https://www.youtube.com/watch?v=9YcRu0HAzO8


話変は変わりますが、高市さんの選挙区でもありますが、奈良県天理市で3月2日(日)に能登復興応援のイベント「天理でつながる!能登半島、助け愛プロジェクト」が開催されます。

イベントのメインは石川県珠洲市を舞台にしたドキュメンタリー映画『凪が灯るころ~奥能登、珠洲の記憶~』の上映会です。

その他に、

・天理大学雅楽部による優雅な雅楽の演奏
・珠洲市馬緤町から駆けつけてのキリコ太鼓の迫力ある演奏
・映画監督や出演者をゲストに迎えて
 「珠洲・祭り・復興」をテーマにトークイベント

が行われます。

詳しい内容は拙ブログに書きました。
http://kopiruakkun.blog.fc2.com/blog-entry-5260.html


映画『凪が灯るころ~奥能登、珠洲の記憶~』は、度重なる地震によって壊滅的な状況に陥った珠洲の人々が、それでもまた、立ち上がろうという姿を取材したドキュメンタリー映画です。

その強い共同体の原動力は、住民らが協力して実施している祭りから生まれる絆ではないかと思います。


奥能登の方々は3年連続の大きな地震だけでなく。

さらには昨年9月には豪雨被害も受けており、どん底中のどん底のはずですが、それでも復興しようとする姿に、映画を観ている方が元気をもらえると思います!

是非多くの方に参加して頂きたいと思っています。

●天理イベントのチラシ
https://kansaisuzukai.net/pdf/tasukeai.pdf

●前売りチケット販売サイト(前売りチケットの販売は2月25日まで)
https://nagitomo-tenri.stores.jp/

●映画の予告編(2分45秒)
https://www.youtube.com/watch?v=IRO_tXL4ibA

映画『凪が灯るころ~奥能登、珠洲の記憶~』は、これから各地で上映されます。
https://www.instagram.com/nagigatomorukoro/

2/24(月)北九州市、2/28(金)東京都江古田映画祭、
3/1(土)東洋大学、京都府長岡京市、3/2(日)奈良県天理市、3/30(日)金沢市
で開催される予定です!

この映画が共同体の大切さを知るきっかけになると幸いです。

いつもありがとうございます。


★北野から

こちらこそ、いつも貴重な情報、ありがとうございます!


★北野への応援メールは

tjkitanojp〇yahoo.co.jp

(〇を@にかえてください。)

まで。



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