◆アングロ・サクソンの世界戦略と日本の行く道
  社会学者・犬飼裕一教授

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著名な社会学者、歴史社会学者・犬飼裕一先生(北海学園大学教授)
が、


「プーチン最強講義」(詳細は→ http://tinyurl.com/nkam4c9  )


の感想を送ってくださいました。


非常に興味深い内容でしたので、皆さんにシェアさせていただきます。


犬飼先生の詳しい経歴(ウィキペディア)はこちら。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8A%AC%E9%A3%BC%E8%A3%95%E4%B8%80



<北野様


『日本自立のためのプーチン最強講義』を読みました。


北野さんの歴史観もますます充実してきましたね。


日英同盟によって日露戦争までの国運上昇と、その後の第一次世界
大戦から日英同盟の破棄、リットン調査団にいたるくだりは、大迫力
です。


アングロ・サクソン系の世界戦略は、世界中の人々が一応受け入れ
られる大義──民主主義、人権、平和──を前に押し出してくるので、
力優先の大陸ヨーロッパやロシアや中国の「大陸式」戦略に比べて
始末が悪い。


「死にたくなかったら俺のいうことを聞け」というのが大陸式だとすれば、


「人類の幸福のための唯一の選択は、私たちの仲間に加わることだ」


とくる。


戦後の日本もそうですし、いまの中国やアラブ世界でもそうですが、
一部の人々はその種の「理念」に共鳴する。


典型は、北野さんが毎度ご指摘の「自虐史観」。


それに感染すると、過去の自国の政治や政治理念が、愚かで邪悪で
あったとしか思えない。


中国やアラブ世界で「革命」を願っている人々も,煎じ詰めれば、
同じ構図ですね。


ただし、英米の「本音」はもっと別のところにあり、実際にはむき出
しの国益外交のためには、ほとんど何でもする。


昨日まで誉めていた「平和主義者」や「民主主義者」、「価値観を
共有している友人」ですら、利益が対立すれば、「悪の帝国」「テロ
リスト」であるとして、抹殺する。


さらに始末が悪いのは、「一流の詐欺師は自分が嘘をついているな
どとは思っていない」という格言よろしく、英米のエリートや政治指導
者たちも、実は「理念」を信じている。


だから、世界中に信じる人がいるわけです。


しかし、彼らは理念を信じているのですが、なぜか国益の方がはる
かに重要になることが多い。


まさにこれこそがアングロ・サクソンの支配する世界で,それ以外
の人々が生きて行く上での最重要問題ですね。


理念を信じすぎるのも危険ですが、利害ばかりに走るのも危険が
いっぱい。


唯一の選択肢は、彼らが信じている(のかどうかあやしい)理念と、
彼らのむき出しの利害の混合物を、一応認めたふりをして、孤立
を避けて仲間を増やすことなのですね。


そういう意味では、年来間違いを告発してきた「自虐史観」にも、
戦後日本では、それなりの役割があったわけです。


敗戦を受け入れて、生きるために「自虐」を呑んだ戦後日本の指
導者たちと、頭から信じている左翼は、同じことを言っていてもま
ったく別物だったわけです。


今回の本の絶頂は、末尾にありました。


「そしてこれから先、中国はどうやって日米を分裂させるか?

そう、日本で『歴史の修正』を求める運動を盛り上げればいい。」(355頁)


さすがプーチン!すばらしいです。

2013.12.1
犬飼裕一 >
   

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